我が氷帝テニス部部長サマはそんじょそこらの王様もびっくりなほどの横暴ぶり。
それで実力が伴うものだから、憎たらしいことこの上ない。
顔はいいわ、勉強できるわ、運動(特にテニス)できるわ、家柄いいわ、と4拍子が見事に揃っている彼の欠点はその捻じ曲がった性格と常人には理解できない美的感覚だろう。
彼の性格がまっとうであれば、俺はきっと跡部を素直に尊敬している。
しかし、跡部が跡部である限り、そんなことはありえず、俺は跡部を尊敬することもなく、アホやなぁと思いながら、日々を過ごしているわけである。
昼休みのランチタイム。
この屋上で俺を含めたテニス部の面子が揃って昼食を取っていた。
今日は跡部もこの輪に交じっており、今はごはんを食べ終わってまったりしているところにかかってきた、誰かからの電話に応対している。
「よう」
「ああ」
「は?」
「ウザイ」
「ふぅん」
「アーン?」
「ハッ」
「へぇ」
「死ね。滅びろ」
携帯を持った跡部を観察していたのだが、約10分という時間で彼が発した言葉のレパートリーはそれがすべてだった。
しかも、酷いことに最後の言葉が締めでその電話は跡部が一方的に切ったことによって終わった。
「何見てんだよ?」
「いや、誰と電話してんのかとおもて」
「千石」
「さよか」
山吹中では、うちとはまったく正反対の地味な部長(名前は知らない)が千石に泣きつかれて、さぞかしうんざりしていることだろう。
「跡部、キヨキヨのこと愛してる?」
俺がそう聞くと、跡部は怪訝そうな顔をした。
「何言ってんだよ?当然だろ」
さらりと言ってのける跡部。
俺は「お熱いですな〜」とおどけて返しつつ、心の中でやっぱり曲がっとるわとしみじみ思う。
「忍足。締まりのない顔すんな。不細工が余計不細工になって、見てるこっちが居たたまれない気持ちになる」
その心から鬱陶しく思っていそうな顔と台詞を、笑顔で流せる俺はかなりの大人だと思う。
──我らが帝王様は、度を越して大事に思っているものに限って、不当に扱ってしまうというなんとも困った性癖をお持ちなのだ──
これがその表れかどうかについて、俺の長年培ってきた観察眼はNOという答えをはじき出しているのだから。
神田 なつめ
千石も跡部も二人ともアホ。
こんな性格の忍足だったら、私は好きです。傍観者希望!
ていうか、南ちゃんが可哀想!!